鐘井輝の経営レポート

長寿老舗企業の特質

2004年01月04日

長寿老舗企業の特質

まとめ
わが国の長寿老舗企業が創業した時代別分布は広範にわたっているが、今回の9つの
事例は1566(永禄9)年から1982(明治25)年の中世から近代までの時代区
分の範囲に属している。
長寿老舗企業の創業期は一般的に以下の四つの時代に区分される。
まず、大和から平安時代1192年までの古代である。この時代は武士による鎌倉幕
府が成立する以前、氏族・家父長制の時代である。次が1192年から1573年の鎌
倉から室町時代の中世である。この時代は封建社会前期で、織田信長が京都へ入京し全
国統一に向かう安土桃山時代以前の時代である。次いで1573年から1868年の安
土桃山から江戸時代の近世である。この時代は中央集権的な封建社会の後期で江戸幕府
までの時代である。最後は1868年から1900年の明治から始まる近代である。そ
こで、第2章で紹介した事例企業の創業時代背景を簡単にみてみよう。
A社の創業した中世時代においても商品経済は未発達であり、経済圏は小さな領地内
に限定されていた。しかし、中世後期には戦国大名の大領主化が進み、商品流通の必要
性が生じている。戦国大名は国力を高めるために、広い領地で経済を発展させる政策を
とり、領地内の交通路を整理して、特産物を奨励した。これらを基礎として全国各地に
特産物が生まれ、商品流通と海陸運送が発達している。こうした戦国大名の政策は各地
で都市経済を発達させ、長寿老舗企業を誕生させた。
B社、C社、D社が創業した近世後期には商品経済が著しい発展を遂げている。農業
生産力は高まり、商品作物の栽培が盛んになった。幕藩体制の下で治水などの条件を整
え、新田開発や特産品を奨励する領主の殖産興業策がとられたのである。これらの殖産
興業策と東海道や海上交通などの全国的流通網の整備である社会基盤づくりが新たな創
業を促進した。
E社、F社、G社、H社、I社が創業した近世末から近代にかけては、開国により本
格的な貿易が開始された時期である。1868年にスタートする明治政府は、富国強兵
ならびに文明開化をスローガンに掲げて、封建的な諸規制の廃止を断行している。同時
に円による貨幣制度を整え、金融機関を設立するとともに、軍需工業および繊維工業を
官営により設立した。さらに鉄道・海運・電信・郵便など交通・通信の近代化をはじめ、
官営や政府の保護のもとでの殖産興業を進展させた。
特に1880年代後半には、官営事業の民間払い下げを本格化し、民間企業を多数設
立させたのである。
以上長寿老舗企業の創業期における時代背景を概観した。このようにその誕生には、
時代背景の影響が濃厚にみられるのである。以降それぞれの企業は「成長、成熟、転機」
を経て事業を継続させていく。
100年以上継続している長寿老舗企業にはただ営々と存続することに意義があるわ
けではない。継続してその企業本来の役割を果たし、人々の生活に貢献するときに意義
を見いだすことができる。いいかえると、長寿老舗企業は永年にわたってその時々に社
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会における様々な機能を担い、その責任を果たしてきたといえよう。
「大阪の長寿老舗企業-大阪市地域中小企業経営動向分析報告書-」
大阪市中小企業指導センター2001 年3 月執筆原稿

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