鐘井輝の経営レポート

2006年タイ・バンコク視察報告

2007年01月10日

2006年タイ・バンコク視察報告2006年タイ・バンコク視察報告

関西本部 鐘井 輝

 去る11月23日(金)~11月27日(月)の 4 日間、関西本部の清沢康弘先生、北川貞夫先生、田中清行先生、北村秀一先生、仲西貞之先生と私が参加してタイ・バンコクの視察旅行に行ってきました。今回の視察旅行は京都の商社に勤務されている仲西先生のご尽力により実現し、大変有意義な内容となりました。

 日本では冬に向かい寒さが日ごとに厳しくなっていく時期でしたが、バンコクでは最高気温が30℃を超え、真夏の暑さを感じる視察となりました。

 わが国は現在において、持続的な経済成長がみられてきておりますが、今回はタイ・バンコクの現状、現地進出の日本企業の経営を探るため訪問しました。

 タイ・バンコクは私にとって今回初めての視察地でしたが、アジア各地との比較も踏まえながら状況やトピックスをレポートします。

2006年タイ・バンコク視察報告




 タイの総面積は約513,115k㎡であり、日本の約1.4倍の領土となっています。タイの総人口は約6,335万人(2004年)ですがそのうち約584万人がバンコク市集まっています。1バーツ=3.1円。日本との時差は-2時間。年間を通して最高気温は30℃を越え、日本の真夏に近い最高気温の都市です。

タイ・バンコクの日系企業

 タイの投資累計額は1985~2005年、認可ベースで日本からが40.5%、アジアNIES21.4%、ASEAN諸国からが3.3%、アメリカ15.3%、ヨーロッパ20.0%(ジェトロバンコクセンター2006,11)で、日本からの投資受入が大きなウエイトを占めています。

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ナワナコン工業団地進出の日系企業        フジクラグループKDK(株)河西社長と記念撮影

 タイへの進出についての利点として安価な労働力、現地市場の成長性、政治・社会情勢の安定性、第三国輸出拠点としての利便性等があげられています。反面問題点として税務・法務の不透明な運用、労働コストの上昇、人材の不足、ジョブホッピングの多さ等が指摘されています。

 今後はタイ国だけに限ったことではありませんが、日系企業の海外への進出への留意点として、自社経営理念・方針の現地従業員への伝達、現地の幹部を交えた会議の定期的開催、要望の吸い上げ、従業員の冠婚葬祭など会社外行事の積極的関与、現地従業員のことを考えて経営を行っていることを理解させる等のコミュニケーションへの配慮が不可欠といえるでしょう。

タイ、バンコク2006視察レポート
平成18年11月23日~27日
鐘井輝経営事務所
中小企業診断士 鐘井 輝

タイ、バンコク2006視察レポート
スワンナプーム空港
2006 年に開港、以前はドン・ムアン空港
近代的で格調ある国際空港
(2006 年予測4,500 万人、2005 年羽田6,328 万人、北京4,100 万人)



2006年タイ・バンコク視察報告





タイ・バンコク概要 ①
タイ全国人口6,197 万人
首都バンコク人口563 万人
仏教徒95%、回教徒4%、キリスト教徒0.6%

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タイ・バンコク概要 ②
タイ平均寿命 男71.4 女76.4
(中国2000 年71.4、日本1967 年71.5)

タイ・バンコク概要 ③
日本とタイのFTAは農業問題がネックになり
遅れている(日本は先進国としての態度が必要)

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タイ・バンコク概要 ④
2006年9月18日のクーデターは18回目
2006年11月現在も戒厳令下
クーデターの支持率は60~70%

タイ・バンコク概要 ⑤
国王、君臨すれど統治せず
国民から尊敬され、言葉を命令ととる
月曜日は国王の誕生日、曜日カラーは黄色

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タイ・バンコク概要 ⑥
タイの2005年GDPは22兆円
(日本は523兆円、中国は258兆円、米国1,445兆円)
タイの2005年1人当たりGDPは30.9万円
(日本は408.5万円、中国は19.8万円、米国487.3万円)

タイ・バンコク概要 ⑦
タイの2005年経済成長率は4.5%
(日本2.6%、中国10.2%、米国3.2%)

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タイ・バンコク概要 ⑥
日本人商工会議所会員数1,252社、43万人(2006年1月)
在タイ日系企業総数就業者100万人以上
バンコク市内の交通状況 ①
公共交通機関のバス乗車賃は6バーツ
ガソリンは1 リットル80 円
(月平均所得約3万円から見ると高額)

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バンコク市内の交通状況 ②
非常に混雑する交通状況、1 時間で100m の場合も
王室などの通行時は通行の規制でさらに渋滞
バンコク市内の交通状況 ③
小回りのきく小型3輪タクシー
の活用が多くみられる

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バンコク市内の交通状況 ④
国内自動車販売台数2005 年、トヨタ37%、いすず24%、ホンダ12%、
日産7%、三菱6%、マツダ2%、その他日本車4%、その他6%

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雇用を担うタイ日系企業 ①
フジクラグループ:38,000人、ミネベア(ベアリング):32,000人
松下グループ(TV・エアコン):16,000人、矢崎:15,700人
トヨタ:12,700人、ホンダ:7,000人
雇用を担うタイ日系企業 ②
最大の貿易相手は日本
2005年輸出12.9兆円(日本1.8兆円、14%)
2005年輸入13.7兆円(日本3.2兆円、23%)

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雇用を担うタイ日系企業 ③
タイの投資受入は日本が最大
1)日本40.5%、2)アジアNIES21.4%、3)ASEAN3.3%
4)米国15.3%、5)欧州20.0%
雇用を担うタイ日系企業 ④
投資先としてのタイの魅力
① 政治の安定性、②社会秩序安定、③高度な産業集積、④ASEAN への生産・輸出拠点
⑤投資優遇制度、⑥インフラ整備、⑦良好な対日関係

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タイ進出の利点と課題

(2005 年度海外直接投資アンケート調査結果)

タイ進出の利点

利点 構成比(%)
1 安価な労働力 50.3
2 現地市場の成長性 46.2
3 政治・社会情勢の安定性 43.4
4 第三国輸出拠点として 33.8
5 組立メーカーへの供給拠点 30.3
6 現地インフラ(電力・運輸等)整備 26.9
7 他国リスク分散の受け皿 22.1
8 投資にかかる優遇税制 21.4
9 現地市場の現状規模 20.7

タイ進出の課題

課題 構成比(%)
1 他社との厳しい競合 45.1
2 労働コストの上昇 40.2
3 管理職クラスの人材確保 27.5

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タイ進出、現状の問題点

内容
1 税務・法務の不透明な運用
解釈、適応基準など運用面で一様でない。
追徴課税は税額の3倍
通関時の賄賂(Tea Money)が横行・慣習化

2 労働コストの上昇 原油価格高騰によるコストインフレ、金利上昇、バーツ高等労
働賃金が上昇傾向
労働慣習の違いによるトラブル、労働争議への対処

3 原材料価格の上昇 原油価格の高騰をきっかけに資材価格が値上がりしているが販
売価格に反映されず

4 人材不足 エンジニア、中間管理職の不足

5 定着率が低い ジョブホッピングが多い

6 為替の変動 最近はバーツ高が定着

7 政治が不安定 これまでは安定していた

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JETRO Bangkok ①
1st Floor,Nantawan Bldg.,(Thai Obayashi Bldg.)
161 Rajadamri Road,Lumpinee,Pathumwan,Bangkok 10330,Thailand
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JETRO Bangkok ②
ジェトロバンコクセンターやジェトロビジネス・サポートセンターが
タイへの投資、進出企業への支援を行う

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投資関連コスト比較
(出所:2006年3月 日本貿易振興機構海外調査部)
単位:(円)1$=116 円換算

バンコク ホーチミン 上海 横浜の順

ワーカー賃金
(月額)
16,936
12,876~21,460
19,952~34,916
346,144

エンジニア賃金
(月額)
36,656
28,884~43,268
38,744~68,788
449,036~519,100

中間管理職
(月額)
67,744
66,352~122,264
89,552~176,436
536,384

法定最低賃金
510/日
4,577/月
9,954/月
694/時

賞与支給額 基本給の
2.6 ヶ月
基本給の1~2 ヶ月
基本給の1~3 ヶ月
基本給の4.45 ヶ月

名目賃金上昇率
2002→2003→2004
▲1.1→1.9→3.7
データなし
9.6→13.8→10.1
▲2.8→0.3→▲0.2

工場団地土地購入価格
(㎡当たり)
6,346アマタナコン団地
土地購入不可
2,900~3,480青浦工業園区
132,558~206,016

事務所用賃料
(月額)(㎡当たり)
1,354サウスサトーン通り
2,668OSIC Bldg.
3,289虹橋経済技術開発区
3,553関内地区

レギュラーガソリン価格
71
55
66
125(2005,11 月)

付加価値税
7(財貨サービス税)
0,5,10%品目で異なる
17
5消費税(国税)

日本への利子送金課税(最高税率)
10
10
10


日本への配当送金課税(最高税率)
15
0
10


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タイの流通業 ①
CVS業態のセブンイレブンは全土に2,042店舗
(2003 年3 月現在)タイのコンビニ業界では圧倒的な店舗数を誇る
大手財閥チャロンポカパングループ
タイの流通業 ②
CVS業態2位はアメリカ資本系列のAM/PMが約500 店舗
日本資本系列のファミリーマートは246 店舗(2002 年12 月現在)
セレクト、タイガーマート、スターマート、レモングリーンなどは
ガソリンスタンドに併設されている

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主要なタイ大手流通業

業態 資本系列 店名 経営状況の順
SM オランダ トップス SM業界NO1企業店舗数50(2002 年12 月)
SM 日本 ジャスコ タイ国内10店舗の展開ラチャダピセーク、ラクシーなどで営業
SM ベルギー フードライオン 2004年タイより撤退大半をトップスに売却
SM タイ フードランド バンコクに6店舗展開全店24時間営業、外国人を意識した品揃え
SM タイ ヴィラマーケット 比較的小規模店舗を展開24時間営業
SM 日本 フジスーパー 親会社は神奈川県の富士シティオ株式会社1985年進出、日本製食料品豊富
Suc フランス ビッグシー 33店舗展開(2002 年12 月)黄緑地に赤の看板
Suc イギリス テスコロータス 53店舗展開(2003 年5 月)テスコロータスエクスプレス名の小型店舗も展開
Suc オランダ マクロ 22店舗展開(2002 年12 月)会員制、買い物袋有料
Suc フランス カルフール 17店舗展開(2002 年12 月)百貨店 日本 伊勢丹 日本人御用達紀伊国屋書店、オリエンタルホテルベーカリー
百貨店 タイ セントラル 1957年創業、12店舗展開の最大手タイ系百貨店では一番の高級感
百貨店 タイ ロビンソン 19店舗展開、1997年のバーツ切り下げで為替差損発生、セントラル傘下に入る

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ナワナコン工業団地 ①
バンコク市内から40分
工場敷地内に仏教関連施設の設置
ナワナコン工業団地 ②
この他の主要な工場団地としてランプーン工業団地、
アユタヤのロジャナ工業団地・
サハラッタナナコン工業団地がある

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タイ、バンコク2006視察レポート
ナワナコン工業団地 ③
タイフジクラグループ
1984年設立、現地雇用総数38,561 人(タイ最大)
ナワナコン工業団地 ④
タイフジクラグループ
日系企業の景況感、2006 年上期回復感は乏しかったが
2006 年下期は上向いている

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ナワナコン工業団地 ⑤
FUJIKRA(THAILAND)LTD.
資本金1,100 万バーツ、従業員数約7,200 人
提案制度、仕事別防帽子の着用、小集団活動など
日本的経営に取り組んでいる
ナワナコン工業団地 ⑥
FUJIKRA(THAILAND)LTD.
賃金は自動車業界に引きずられる(従業員から要求)
2005 年のボーナスは約3ヶ月支給(自動車業界は5~6 ヶ月)

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タイ人気質

(出所:ジェトロバンククセンター2006、11月)
できないことでも「できる」と言う。
分かったと言っても分かっていない。
例外を一旦認めると普遍化する。
認識の幅が広い。
自分勝手な解釈(文章にして残す)。
変わり身の早さ。
本音をなかなか言わない。
要求する場合には具体的に。
メンツに拘る
ホウ・レン・ソウが浸透しにくい。
予見と分析力に乏しい。
仕事に対する、義務感、責任感に乏しい。
時間にルーズ。
技術の継承がすすみにくい。

コミュニケーション時の留意点

経営理念や経営方針の伝達
タイ人幹部を交えた会議の定期的開催
要望などの吸い上げ
従業員の冠婚葬祭、会社外行事への積極的関与
自分達(タイ人)のことも考えて経営を行っていることを理解させる


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