2003年台湾経営環境視察レポート
2007年01月09日
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2003年台湾経営環境視察レポート
帝塚山大学経済学部講師鐘井輝
2003年3月24日~28日の間、台湾企業の経営環境を調査するために高雄・台中・台
北の有力企業や施設の訪問を行い、個別企業の経営環境の現状や取組について調査しまし
た。経済動向や経営環境全般についてちょうど年前の年に同地を訪問して調査を 2000年
行いましたが、前回とは大きな異なりが見受けられています。
2000年にわが国の商工会議所にあたる台北商業総會の都彦豪駐曾顧問から台湾の現状
について説明を受けました。内容の要約は以下の通りでした。
台湾は島国で日本とよく似ており、活発さは日本と同じであり、台湾の経済成長率は今
のところ( 2000 年、7月現在)7.9% で世界第一である。
台湾経済のほとんどは、中小企業に頼っているのでこれを重んじていかなければダメに
なってしまう。過去年間中小企業は貢献してきたし、これからも変わらないだろう。
中小企業も全世界の経済の状況に合わせて、自由化と透明化に応じていく必要がある。
透明化の問題は難しい。(世界貿易機構)に加盟することになれば、ますます自由化へWTO
の取組みが大切になってくる。
コンピュータ関係は日本の中小企業とタイアップして努力していくが、伝統的な体質の
中小企業の存続が問題になっている。これからも、(靴、自転車などは)中国、ベトナムな
どへ移転していくことになろう。
新政権(陳水扁総統)の考え方は、台湾は日本やヨーロッパと同じような組織を真似て努
力して行こうという路線である過去年間李登輝総統の政策は行きたいところでも
そんなに急ぐな」とした政策だった。中国に行くにも大きい投資はしなかったので、大企
業は行けなかった。新政権ではその政策が良いのか、良くないのか検討中である。台湾企
業にとって、中国は土地や人件費など、魅力もあり、大企業もこれから中国に投資してい
くところが増えるだろうということでした。
前回の調査結果も踏まえ、以下今回の視察で気づいた点について報告します。
台湾の現状と台湾からみた日本
日本と台湾の民間ベースでの交流に中心的な役割を果たしている台中商務協議会の会長
であり、前台湾銀行頭取鄭世松氏を交え台湾の現状と台湾からみた日本というテーマ
でディスカッションを行いました。ポイントを箇条書きで挙げます。
*台湾は1970年代まで日本を手本にその後を追いかけてきた。
*アメリカ経済が良くなかった1980年代からは日本と異なった行動をとった。
具体的には台湾はハイテク方面に力を入れたアメリカ経済が良くなかった関係もあり
海外へ留学していた人材や外資系企業で働いた人材が台湾に戻ってきた。
* 1990 年代の始めにハイテクの基礎ができあがり、その後4.5~ 5%の経済成長が維持
できた。
* 1980年代後半からローテクは中国に移ったがハイテクによりカバーした。
* 1997,98年のアジアで発生した金融危機のときにも台湾は影響を受けなかった。
- 2 -
* 年ITバブル崩壊後、台湾のハイテク産業も中国へ移らないと競争が維持できな2001
くなり空洞化が発生したため、現在上海では台湾人が40~ 50万人活動している。
*サービス産業の成長が望まれる。
「インターネットが普及しリアルタイムで情報が提供され、同一性のあるサービスが要求
されている。アジアマーケットへ企業がどのようなサービスを展開していくかが課題に
なる」。
*これから中国経済の成長が脅威になる。
「台湾においてハイテクが経済に貢献したのは海外へ留学していた人材や外資系企業で働
いた人材が戻ってきた背景があったが、同様に天安門事件で流出した人材が中国に戻り
ハイテク経済成長に寄与する可能性がある。ハイテク産業において日本、韓国、台湾は
大変厳しい競争に入っていくことが予想される」。
*日本人経営者は慎重すぎるのではないか。
「オーナー経営者が少なくなり、過剰なまでにリスクを避けているのではないか。オー
ナー経営者は先行きが見えないときにも判断を行う。日本企業での起業家精神、チャレ
ンジ精神が見られない。日本では金融機関も含め先行き不透明を理由に決断を避けてい
るのではないか(決断しないことも一つの決断になるのではないか。台湾ではベンチ
ャービジネスが多くリスクのある活動もとられている。リスクがあっても判断する」。
*アメリカの経営スタイルからも学ぶべきではないか。
「アメリカは判断できる人を経営者に迎える。アメリカの企業も間違いをおかすがそれを
すぐに直す姿勢がある」。
*台湾の優秀なミドルマネージャーは将来オーナーになる夢を持っている。
「台湾ミドルマネージャーは若く、活力がある。日本人のミドルマネージャーはリストラ
に怯えていないか。台湾では職業学校を作る方向で教育が見直されている。日本では技
能職につく人がなくなってきているのではないか」。
2 サービス産業の動向
- 3 -
サービス業関係では高雄・台中・台北のいずれの訪問地でも多くのフランチャイズチェ
ーンの展開がみられました。セブンイレブンやファミリーマートなどのわが国の代表的コ
ンビニエンスストアやケンタッキーフライドチキン、ドトールコーヒーなど日本と同様の
店舗が営業を行っています。
なかでも邱永漢の導入した大創産業の「50 元ショップ」、吉野家の牛丼などが人気を集めていました特に吉野家の朝食メニューは玉子ハム牛肉コーヒーが49元約 180 円)と価格が手ごろなため大好評です。 。ちなみにアルバイト従業員の時給は90 元(320~330 円)が相場になっていました。
以上いずれの視察も経済界の方とのヒアリングを中心に行いました。今回印象が強かっ
た点は次の2点です。
①日本全体が先行きの不透明感を理由に決断や判断を避けているという指摘、
②経済活性化のためのサービス産業分野成長への期待です。
2003年と2000年のレポートの比較から、今後日本経済が再活性化するためのキーワー
ドとして
①ハングリー精神、
②リスクテイク、
③バイタリティ
を挙げることができるでしょう。
滋賀県商工会連合会機関誌年月号執筆原稿2003 5
2003年台湾経営環境視察レポート
帝塚山大学経済学部講師鐘井輝
2003年3月24日~28日の間、台湾企業の経営環境を調査するために高雄・台中・台
北の有力企業や施設の訪問を行い、個別企業の経営環境の現状や取組について調査しまし
た。経済動向や経営環境全般についてちょうど年前の年に同地を訪問して調査を 2000年
行いましたが、前回とは大きな異なりが見受けられています。
2000年にわが国の商工会議所にあたる台北商業総會の都彦豪駐曾顧問から台湾の現状
について説明を受けました。内容の要約は以下の通りでした。
台湾は島国で日本とよく似ており、活発さは日本と同じであり、台湾の経済成長率は今
のところ( 2000 年、7月現在)7.9% で世界第一である。
台湾経済のほとんどは、中小企業に頼っているのでこれを重んじていかなければダメに
なってしまう。過去年間中小企業は貢献してきたし、これからも変わらないだろう。
中小企業も全世界の経済の状況に合わせて、自由化と透明化に応じていく必要がある。
透明化の問題は難しい。(世界貿易機構)に加盟することになれば、ますます自由化へWTO
の取組みが大切になってくる。
コンピュータ関係は日本の中小企業とタイアップして努力していくが、伝統的な体質の
中小企業の存続が問題になっている。これからも、(靴、自転車などは)中国、ベトナムな
どへ移転していくことになろう。
新政権(陳水扁総統)の考え方は、台湾は日本やヨーロッパと同じような組織を真似て努
力して行こうという路線である過去年間李登輝総統の政策は行きたいところでも
そんなに急ぐな」とした政策だった。中国に行くにも大きい投資はしなかったので、大企
業は行けなかった。新政権ではその政策が良いのか、良くないのか検討中である。台湾企
業にとって、中国は土地や人件費など、魅力もあり、大企業もこれから中国に投資してい
くところが増えるだろうということでした。
前回の調査結果も踏まえ、以下今回の視察で気づいた点について報告します。
台湾の現状と台湾からみた日本
日本と台湾の民間ベースでの交流に中心的な役割を果たしている台中商務協議会の会長
であり、前台湾銀行頭取鄭世松氏を交え台湾の現状と台湾からみた日本というテーマ
でディスカッションを行いました。ポイントを箇条書きで挙げます。
*台湾は1970年代まで日本を手本にその後を追いかけてきた。
*アメリカ経済が良くなかった1980年代からは日本と異なった行動をとった。
具体的には台湾はハイテク方面に力を入れたアメリカ経済が良くなかった関係もあり
海外へ留学していた人材や外資系企業で働いた人材が台湾に戻ってきた。
* 1990 年代の始めにハイテクの基礎ができあがり、その後4.5~ 5%の経済成長が維持
できた。
* 1980年代後半からローテクは中国に移ったがハイテクによりカバーした。
* 1997,98年のアジアで発生した金融危機のときにも台湾は影響を受けなかった。
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* 年ITバブル崩壊後、台湾のハイテク産業も中国へ移らないと競争が維持できな2001
くなり空洞化が発生したため、現在上海では台湾人が40~ 50万人活動している。
*サービス産業の成長が望まれる。
「インターネットが普及しリアルタイムで情報が提供され、同一性のあるサービスが要求
されている。アジアマーケットへ企業がどのようなサービスを展開していくかが課題に
なる」。
*これから中国経済の成長が脅威になる。
「台湾においてハイテクが経済に貢献したのは海外へ留学していた人材や外資系企業で働
いた人材が戻ってきた背景があったが、同様に天安門事件で流出した人材が中国に戻り
ハイテク経済成長に寄与する可能性がある。ハイテク産業において日本、韓国、台湾は
大変厳しい競争に入っていくことが予想される」。
*日本人経営者は慎重すぎるのではないか。
「オーナー経営者が少なくなり、過剰なまでにリスクを避けているのではないか。オー
ナー経営者は先行きが見えないときにも判断を行う。日本企業での起業家精神、チャレ
ンジ精神が見られない。日本では金融機関も含め先行き不透明を理由に決断を避けてい
るのではないか(決断しないことも一つの決断になるのではないか。台湾ではベンチ
ャービジネスが多くリスクのある活動もとられている。リスクがあっても判断する」。
*アメリカの経営スタイルからも学ぶべきではないか。
「アメリカは判断できる人を経営者に迎える。アメリカの企業も間違いをおかすがそれを
すぐに直す姿勢がある」。
*台湾の優秀なミドルマネージャーは将来オーナーになる夢を持っている。
「台湾ミドルマネージャーは若く、活力がある。日本人のミドルマネージャーはリストラ
に怯えていないか。台湾では職業学校を作る方向で教育が見直されている。日本では技
能職につく人がなくなってきているのではないか」。
2 サービス産業の動向
- 3 -
サービス業関係では高雄・台中・台北のいずれの訪問地でも多くのフランチャイズチェ
ーンの展開がみられました。セブンイレブンやファミリーマートなどのわが国の代表的コ
ンビニエンスストアやケンタッキーフライドチキン、ドトールコーヒーなど日本と同様の
店舗が営業を行っています。
なかでも邱永漢の導入した大創産業の「50 元ショップ」、吉野家の牛丼などが人気を集めていました特に吉野家の朝食メニューは玉子ハム牛肉コーヒーが49元約 180 円)と価格が手ごろなため大好評です。 。ちなみにアルバイト従業員の時給は90 元(320~330 円)が相場になっていました。
以上いずれの視察も経済界の方とのヒアリングを中心に行いました。今回印象が強かっ
た点は次の2点です。
①日本全体が先行きの不透明感を理由に決断や判断を避けているという指摘、
②経済活性化のためのサービス産業分野成長への期待です。
2003年と2000年のレポートの比較から、今後日本経済が再活性化するためのキーワー
ドとして
①ハングリー精神、
②リスクテイク、
③バイタリティ
を挙げることができるでしょう。
滋賀県商工会連合会機関誌年月号執筆原稿2003 5
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THAI Bangkok 視察レポート2013
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Posted by akira at 15:54│Comments(0)
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